タリバンと麻薬

http://d.hatena.ne.jp/uumin3/20070725#p3
http://d.hatena.ne.jp/uumin3/20070724#p2

私はタリバンが麻薬売買によって活動資金を作っているという話を聞いたときから、彼らに同情的にはなれません。

という記述を見て少し考えました。

小熊英二の「民主と愛国」によると、中国共産党を除く軍閥(国民党や日本軍を含む)は麻薬を資金源としていたようです。
そして、当時の日本軍の麻薬政策に批判的な日本人の文章を引いているのですが、小熊さんは現代の感覚に歪められていないのだろうか、と思ったのです。
つまり、酒やタバコに対して麻薬がどの程度悪だと「その当時」されていたのか、という点で逆に誤解がありそうだということです。


アヘンを赤ん坊に呑ませる習慣はイギリスでも19世紀まであった記憶があります。
少なくとも産業革命後の労働者階級の風習としてあったことは世界史の教科書にもあったと思います。

100年ほど前,アヘンは赤ん坊を泣き止ませるためや,歯痛を和らげるためなど,ごくごく日常的に用いられていたと言われている。

http://d.hatena.ne.jp/Mephistopheles/20070713/1184343844
で、探したのだけれども、アヘン戦争がノイズになって見つけられたのは上だけでした。
イギリス法で opium を調べれば分かるかな…

つまり、

アフガニスタン、中でも東北部バダクシャン州などに住むイスラム教徒社会や北部のトルクメン人社会では何世紀もの昔から、子どもにアヘンを与える風習がある。

http://d.hatena.ne.jp/oguogu/20060904/1157356079
にあるライブドアニュースからの引用は真実でも誤解を与える表現でしょう。



それで結論。どの中毒性のある嗜好品を禁止するか、というのは極めて政治的なものでしょう。少なくとも、軍閥(支配勢力といったほうが適切か)が資金源として麻薬を用いるのは50年前に中国で見られたことであり、アヘンの赤ん坊への投与は100年前のイギリスで自然であったことです。アフガニスタンの乳児死亡率がほぼ日本の大正時代に相当することを考えれば、日本とアフガニスタンの空間的な差は、日本での90年ほどの時間的な差に相当するのでしょう。麻薬売買即悪という判断は、2000年前後の日本の文化環境に強く影響されているから下せたものです。
もちろん、私も上の文化環境に強く影響されていますから、将来的に資金源としての麻薬が肯定されるとは思えません。


でも、たとえば武器輸出国に比べてどちらがより悪いか、という判断が300年後の世界で引っくり返っていないという確信ができますか。「同情的になれない」ほどの大きなことではないのではないでしょうか。