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反対称による周波数倍増
引き続き Mollow の三つ組みが自己周波数変調(resonant analogue of self-phase modulation)をあらわしているとする。3.6(c)は基本波の周りのMollow分裂を表している。\omega / \omega_0 = 1を中心にピークが出て裾野は\omega / \omega_0 = 2あたりで消えている。また、\omega / \omega_0 = 3でも小さなピークがでている。この共鳴と非共鳴の移行する位置はレーザースペクトルの幅で決まる。
(a)-(c)の白いカーブは現象論の非共鳴摂動自己周波数変調(phenomenological off-resonant perturbative self-phase modulation)と3倍の調和振動で説明される。これは2.4で説明された。
しかし、大きなRabi周波数では様子が変わり、\omega / \omega_0 = 2で鋭いピークが出る。
(d)の\Omega_R / \omega_0 = 2ではこれがもっとも突出した周波数になっている。


図3.7は搬送波のオフセット周波数φを見るために\Omega_R / \omega_0 = 0.76\Omega / \omega_0 = 2を拡大したもの。φをπで割った余りが見える。これらは基本波と3次の波の干渉で起きると考えていたので 2φ の周期差が生まれ、よって、2πではなくてπ周期になるのは自然だ。
3.7(b)では、3.7(c)のCEO位相を0に固定して、パルス幅をt_{FWHM}を5fsから10fsにした。この条件下では倍周波数のピークが8fsあたりで消滅しているのが分かる。パルスの強さと短さがこの倍周波数ピークを作るのに必要だとわかる。実はこの現象は3倍波が非常に広がってできたもので、\omega / \omega_0 = 2 = \Omega / \omega_0の共鳴も表している。短いパルスはスペクトルを広げることがわかる。
Rabi周波数が大きいとより高次の倍音が関わってくる。たとえば、ガウシアンパルスレーザだと2.4で議論したようにN次の振動がsqrt{N}の強さで寄与する。
二準位系は反対称性を持つので\chi^{(2)}の効果は打ち消されるはずである。3次の短いパルスと強い強度が目に見える強度を作る。
「2次のように変装する3次」("THG in the disguise of SHG")と呼ばれている。

problem 3.5
\Omega/\omega_0 = 2の狭い二準位系が\hbar \omega_0 = 1.5eVsinc^2パルスで励起されている様子を考えよう。「2次のように変装する3次」が現れる、最大のt_{FWHM}\chi^{(3)}に対していくらか。

answer
「2次のように変装する3次」が現れるためには3次の低周波数側の端が\omega_0とかぶる必要がある。3倍周波数の裾の幅は基本周波数の3倍なので 2\omega_0 - 3\delta \omega/2=0だから\delta \omega/\omega_0=2/3。問題2.2を参考にすると\delta \omega \delta t = 2\pi \times 0.8859\hbar \omega_0 = 1.5eVより、t_{FWHM}=\delta t =3.6fs
となる。ただ、この時点でのサイズは非常に小さい。7.2章の5fsパルスから摂動的でないくらいはっきりとでる。

problem 3.6
二準位系の\Omega/\omega_0 >> 1な非常に非共鳴な励起で摂動極限\Omega_R/\Omega << 1なものを考える。分極率をテーラー展開したものを(2.37)から求めよ。3次の影響の受けやすさに関してはどうだろう。

answer
2.37のように過去の情報を引きずらないためには、Blochベクトルの時間ベクトルは0でなくてはいけない。調和振動子でこれが成立するためには\Omega/\omega << 1であればよい。逆を考えると、1/T_1が大きくなくてはいけない。この極限では
0 = + \Omega v - u/T_2
0 = - \Omega u - 2\Omega_R(t)w - v/T_2
0 = + 2\Omega_R(t)v - (w+1)/T_1
となる。消去して連立方程式を解くと
\Large w(t)=-\frac{1}{1+\frac{T_1/T_2}{\Omega^2+1/T_2^2}4\Omega_R^2(t)}
\Large u(t)=-\frac{2\Omega_R(t)\Omega}{\Omega^2+1/T_2^2}w(t)
摂動極限(perturbative limit)では\Omega_R/\Omega << 1、より\Large w(t)=-(1-\frac{T_1/T_2}{\Omega^2+1/T_2^2}4\Omega_R^2(t))とできる。

(3.20)の式のP(\mathbb{r},t)=\frac{N_{2LS}}{V} d uを用いると
\Large P(t)=\frac{N_{2LS}}{V} d u(t) =\frac{N_{2LS}}{V} d \frac{2\Omega_R(t)\Omega}{\Omega^2+1/T_2^2}(1-\frac{T_1/T_2}{\Omega^2+1/T_2^2}4\Omega_R^2(t))+\cdots
で、これは
\epsilon_0(\chi^{(1)}E(t)+\chi^{(3)}E^3(t)+\cdots)と等しい。
ここで偶数項目は反対称性から0とした。
まとめると、|\chi^{(N)}|\propto(\frac{\Omega}{\omega_0}^{-N}) \qquad for \frac{\Omega}{\omega_0} >> 1 \quad and \quad \frac{\Omega_R}{\omega} << 1とわかる。