無限

以前「自然数より無理数の方が大きい集合である」ということをどこかで見た気がするのです。
そこで疑問に思ったのですが、
A「自然数を全て足した」のと、
B「0以上1未満の数を全て足した」のでは
どちらの方が大きいと言えるのでしょうか?

A 1+2+3+・・・+9999999+・・・=+∞
B 0.1+0.2+0.3+・・・+0.999・・・+限りなく1に近い数+・・・=+∞?
どちらも無限回足すのですから、最終的には(最終があるのかどうか・・・)+∞になりそうな気がします。
感覚的にはAの方が大きい気がするのですが、私はBの方が大きいのではないかと思ってますが、どうなのでしょう?どちらも+∞で同じと考えるべきなのでしょうか?
①A、Bのどちらが大きいのか、もしくは同じなのか?
② ①の結論はなぜそうなのか?
教えてください!

http://www.hatena.ne.jp/1126291686

議論が大体収束しましたのでまとめた上で報告いたします。

広いところから行きましょう。

数学は抽象化により、多くの具体的なことが一緒に扱えるようになったというところに強さがあります。
単純な例だと、1箱50個入りみかん3箱で150個という定理があっても、みかんにしか使えないのでは役に立ちません。でも、これが任意のもので任意の個数でも使える、1箱n個入りのX m箱ならば、nm個というのは「買い物でなら」とても使える定理でしょう。

まず、 = とは何かを考えましょう。これは同値関係という風に拡張されます。反射律、対称律、推移律の三つが成り立てば、おお、=っぽいとなります。具体的には

a=a

これは成り立って欲しい。

a=b ならば b=a

これ成り立たないと困りますね。

a=b で b=c ならば a=c

当然ですね。

この3つの性質が成り立てば、同値関係とよびます。

たとえば、「男なんてみんな一緒よ」というのは、人の集合に性別で同値関係をいれたら男はみな一緒になるという非常にあたりまえのことをいっております。多分。


次は、大小関係。これってどういうものかなと考えましょう。イコールのついているやつのほうが扱いやすいのでこれをもって全順序というのを考えます。
反射律 a ≤ a
推移律 a ≤ b で b ≤ c ならば a ≤ c
反対称律 a ≤ b で b ≤ a ならば a = a

普通の順序がこれを満たしていることを確認してくださいな。
ちなみに、ある順序の双対順序という(すべて逆にした)順序があります。
たとえば、実数の普通の順序の双対順序を例に取ります。
これを ≤^ とでもあらわすことにしたら
5 ≤^ 3
0 ≤^ 0
みたいになります。(つまり、≤で大きいほうが、≤^では小さいという順序。)これが順序の公理系(反射律 推移律 反対称律)を満たすことは明らかでしょう。

hoge >>> 越えられない壁 >>> foo
に対して、「双対順序でな!」とかいえば、素敵な逆襲になります。多分。

ついでに和も定義しましょう。ある集合Sの元(中のもの)を二つ取ってきて
a+b
って感じのやつですね。

結合法則 (a+b)+c = a+(b+c)
零元の存在 a+0=0+a=aとなる0がある
逆元の存在 aに対して、あるbがSの中にあって a+b=b+a=0
可換 a+b=b+a

あ、集合っていうのは物の集まりのことです。と書くと、めっ!とか言われそうですがここではこれでいいと思います。

ここまで、軽い前提知識でした。
で、ここで分かることは、1と2ってどちらが大きいのですか?という質問をしたとしても、
1<2 です。という答えのほかに、 2<1 (ただしよく使われる順序の双対順序で)という答えもありうることになります。ですから、問題文は「もっとも普通な順序で」という条件がなくてはいけなかったことが分かります。
それは和に関しても同様で、上の4つを満たしていれば加法と呼ばれうるので加法はいくらでも定義できます。たとえば、実数から0を除いたものは積に関して加法群になります。積か和かはっきりしろといわれても、積に関して加法です。


さらに、無限というのもいろいろなところで使われていて、実数の発散の無限、整列集合の無限、基数集合の無限、などなどがあります。

基数集合からいきましょう。これは"1対1対応"の世界の話です。
3個と5個はどちらが大きいか。といったときに、一対一対応を作ってあまるほうを多いとしています。一対一対応を作るというのは、右側のものと左側のものを一つずつ線で繋ぐ動作です。

5個のみかんと5個のりんごはどちらが多いか、"同じ"だ。

ここで"同じ"という言葉が出てきました。実は、これは上で出てきた同値関係になっています。

みかんとりんごが同じ数だけあります。りんごとすいかが同じ数だけあります。
ならば、みかんとみかんは同じ数だけあります。
ならば、みかんとすいかは同じ数だけあります。
ならば、りんごとみかんは同じ数だけあります。

これを拡張して、自然数と正の偶数とはどちらが多いか。とすれば同じになります。

このある物がどれくらいあるかを「濃度」と呼びます。そして、有限個でない濃度を無限と表現するのです。自然数の濃度と同じものを可算無限とよび、それ以上(つまり、自然数と1対1対応を作って余るもの)を非可算無限あると呼びます。

ここで実数と自然数とは1対1を作ると実数が余るというのはカントールが証明して、「私は見る、しかし、信じられない」(Je le vois, mais je ne le crois pas.) といっております。(これは別の定理でした。)この証明が対角線論法です。

次に、整列集合の話。
順序集合に「どんな部分をとっても一番小さいやつが存在する」という条件をつけたのが整列集合です。たとえば、13から82までの整数は整列集合です。{23,41,68}という部分のなかには一番小さい23が存在します。でも、0より大きい実数は整列ではありません。たとえば、0.1よりも0.01が小さくて、0.001がそれよりも小さくて…となりますから。
で、実は整列集合同士にも、大小関係が決められます。
"1対1対応"ただし、一番小さいやつ同士が対応して、二番目が二番目と…という風に対応付けていくと、余ったほうがでかくて、足りなくなったほうが小さいのです。で、両方余ることがないことや、やり方によって変わったりしないことが示せます。で、さらにここに和を導入しますと、

0,1,2,3,4,5,6… ω,ω+1,ω+2,ω+3,ω+4… 2ω,2ω+1… 3ω… ω^2,ω^2+1,ω^2+2,… ω^2+ω,ω^2+ω+1… みたいなならびになります。ここに和が定義できて、元が3つのものの後ろに、元がω+2のものをくっつけたもの、3+(ω+2)=ω+2 みたいにする。だけど、(ω+2)+3=ω+5。これが順序数の演算。

となります。可換(上を参照)じゃないじゃんというのはそうで、加法群ではなくてモノイド(結合法則単位元の存在だけが成立するもの)ですが、慣習的にこれは"整列集合の和"と呼ばれます。

基数集合の濃度のところでも和は定義できて、これは、Aの濃度とBの濃度は、AとBをあわせたもの(AとBの直和と呼ぶ)の濃度という具合に決めます。

0,1,2,3… ω, ω^ω, ω^ω^ω… これにも和が(直和の濃度と)定義できて ω+2=ω。

と、書いたらちゃんとアレフ0で書けと怒られました。こう書くこともないわけではないと思っていたのですが。


最後、実数の収束の話。
0,1,2,3,4,5,6… でラベルのついた実数a_nがあるとしましょう。nを決めたらa_nが決まります。
この実数列がaに収束するというものを次のように書きます。(ああ、数式書かないつもりだったのに書いちゃった。)
lim_{n \to \infty} a_n = a
収束というのは、「だんだん近づいていくいくらでも近づける」ということです。1, 1/2, 1/4, 1/8, …というのはだんだん0に近づくいくらでも0に近づける気がしませんか。これを厳密に表現すると、次のようになります。0からちょっぴり離れたところを丸で囲む。そうすると、上の列の何番目以降かからは全部がその丸の中に入るようになる。丸の大きさをどんなに小さくしてもそうなる。
本当でしょうか。たとえば、0.1のサイズの丸を書きます。そうすると5項目の1/16以降は全部丸の中です。0.001ならば、11項目の1/1024以降は全部丸の中です。収束するっぽいですね。
しかし、収束しないものもあります。1,-1,1,-1,1,-1,… これはだめそうです。これを"振動する"と呼びます。

そして最後、"無限大に発散する"というのは、どのような数を持ってきてもいつか超えられてしまいそれ以降ずっと越えることです。たとえば、1,2,3,4,5…というのは、27を持ってきても27項目以降は超えるし、10000でも10000項目以降はすべて超えます。悲しいですね。

いよいよ、無限和。順番に並べられている数の和は次のようです。
1項目までを足したやつ、2項目までを足したやつ、3項目までを足したやつ…と並べたものが収束するときに、この数列の和と呼びます。
これがプラスの無限大に発散するときには、略記として、=+∞と書きます。

A 1+2+3+・・・+9999999+・・・=+∞

というのは、この無限になります。

ちなみに、正の数と負の数が並んでいるときには順番を入れ替えると(ある条件下では)好きな数にできることが知られています。
で、0以上1未満の数すべてを足そうにも順番が決まっていないのでこの方法では定義しません。

まあ、それで(0以上1未満の数を全て足した)というような非可算無限和は定義しないのが普通である(順番に並べられないし)と思っていたのだけれども、ルベーグ積分論にこのような和に近い概念があって、それは、「ありとあらゆる有限個とってきたときの一番大きいやつ」というものでした。どれよりも大きいやつがあるときは、これまた発散するとと呼びまして+∞ですね。この和は大抵の場合は定義できないのだけれども、この場合は両方定義できて、両方とも発散しますね。
で、この発散することを =+∞と"略記"しているのです。

とりあえず、一段落。オーダーの話とかもいる?

あらさがしコーナー
探すほどでもないのですが。
2は前半と後半が別の話ですね。まあ、これが妥当ですか。
5は実数の収束に関しては正しいことを言っています。
6は危ないです。どこが危ないかを全部あげるのは面倒ですが、たとえば、

その有理数の点と点の間に必ず無理数の点がある事は証明されています。これが「必ず複数の」点が存在すると証明されれば、
自然数=∞<無理数
となるのですが、まだ証明されていません。

複数の点が存在するのは示せます。そして、それが複数存在しても、無理数の濃度が自然数の濃度よりも大きいとはいえません。そして、大きいことは示されています。
= を同値でないのに使う時点で危ないですが。そして、カントール以下の豆知識は信じがたい。
7は実数の収束に関して正しい。
8は証明にならない。
9は何言っているか不明。
10は"+1/2^∞"という表記を除きよし。