ミトコンドリアイブ

どうやら http://d.hatena.ne.jp/nuc/20051206/p2立花隆ネタ(東大での授業がひどいことに関して)の反応要求と見られてしまったらしく、http://d.hatena.ne.jp/oOmeowOo/20051207/1133954687 に返事が来た。

そこのコメント欄にてミトコンドリアイブの話をしていた。

人類の母、アフリカ人女性のイブのお話って、女性だけから子孫に継承されるミトコンドリア系統樹が収束するってお話だっけ?

クラスター分析をすればどこかに収束するのは当たり前なので、なぜそこまでセンセーショナルに取り扱われる必要があるのか分からない。>ミトコンドリアイブ

うん、たしかに当たり前だが、いつごろ分岐したかが思ったよりも近かったというならば、そこそこ面白い。思ったより変異頻度が低いだけかもしれないがね。ここから人類皆兄弟を導くのは純だなあと思う程度だが。


そして、偶然偶然、血液型の http://www.meken.med.kyushu-u.ac.jp/~tosakai/ から http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20051205/p1 に行き着いた。
Y染色体の周りに関するコラム http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/051130_tennou/index4.html に関しては僕はどちらかというと id:NATROM さん側の立場だが、大筋は「そこまでは」こけてないと取った。その意味では例の授業ほどはひどくないだろう。

ランダムウォークで例えてみよう。酔っ払いを崖っぷちに100人集めて、よーいどんすれば、どんどん酔っ払いは落ちていく。時間が経ったところで見てみれば、生き残っている酔っ払いは崖から離れていることが多い。ちなみに、十分時間が経てば、他の酔っ払いはみな崖から落ちてしまって酔っ払いは一人になる。これが、Y染色体ミトコンドリアによって一人の共通祖先にたどれる理由である。

ミトコンドリアに関しては上のクラスター分析説のほうが妥当だと思われる。無変異であるとは思えないのと、十分時間が経てばということだが人数の二乗程度の時間はかかりそうだから人類だと世代が足りないと思われる。
生物の"自然発生"やミトコンドリアとの共生からの取り込みが何度も起きたという仮定が無駄であることをいうならばランダムウォークの話は適切だろう。

あと、もう一点、

たとえこうした生存上の有利が一切なかったとしても、ほとんどの場合、現存する任意のY染色体について同祖的なY染色体はゴロゴロある。ある庶民Bの男系をどんどん神武天皇の時代までさかのぼったとしよう。(神武天皇にいきつく可能性だってありうるけれども)庶民Mにたどり着いたとする。さて、庶民MのY染色体は、現在の日本にどのくらいあるのだろうか?ゴロゴロあるというのがその答えである。庶民Mと同時代に生きた庶民L、庶民N、庶民O、庶民PなどのY染色体は、上記した理由によって、現代には伝わらなかったであろう。現在の残っているというだけで、そのY染色体はきわめてラッキーなわけだ。

人類の歴史約500万年、ホモサピエンスの15万年程度に対して、2665年(笑)は基本的に短いので当時十分にY染色体は種類が少なくなっていたと思われる。また、弥生時代には日本に100万人程度いたとされるので変異が多型に化けるほどの偶然は起きないだろう。

おっと、こんなのも見つけた。 http://d.hatena.ne.jp/shokou5/20051202/p2

(snip)細胞生物学の知識がある人はよく知るように、ミトコンドリアは女性から女性にしか伝わらない。(snip)

ミトコンドリアは女性から女性にしか伝わらない!!衝撃の事実。立花隆の細胞にはミトコンドリアが存在しないのか!!細胞生物学、不勉強でした。Cell読み直します。
(snip)

うわ。そうだったのか!
いや、まあこれはさすがに筆が滑ったんだろう。と思ったが、
http://stsnj.org/nj/essay2002/sonoda01.html によると

・・・正確に言うと、生物のあらゆる細胞には、エネルギー産出システムを受け持つミトコンドリアという細胞小器官があり、そこではA、T、G、Cではない別の暗号システムを使っている。これは、進化のきわめて初期の段階に、別の暗号システムを使う原始的生物がおり、それが酸素をうまく使うすぐれたエネルギーシステムを持っていたので、環境に酸素が増えてきたとき、現生生物が、それをエネルギーシステムとして丸ごと細胞内に取りこんで細胞内小器官にしてしまったのだろうといわれている。(中略)そしてこのことは、現生生物がみんなスーパーファミリーという考え方に、いささかでも、修正を迫るものではない。現生生物はみなミトコンドリアを細胞内小器官として持っているという意味においても、同一のスーパーファミリーに属しているのである。(『21世紀 知の挑戦』)

この短い文章の中に、二つも間違いがある。一つは、「ミトコンドリアという細胞小器官があり、そこではA、T、G、Cではない別の暗号システムを使っている」のくだりだ。正しくは、「ミトコンドリアもA、T、G、Cの暗号システムを使っている」。別にミトコンドリア地球外生物ではない。
 もう一つ、「現生生物はみなミトコンドリアを細胞内小器官として持っている」というのも間違っている。バクテリアなどの原核生物ミトコンドリアを持っていない。」(谷田和一郎『立花隆先生、かなりヘンですよ』より抜粋)

とか書いているらしいので、あながち「俺はミトコンドリア欠損人間♪」と思っていないとは思えないところが怖いなあ。

以下、どういう議論をしたかの記録。
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20051206/p2 立花隆ネタ
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20051203/p3 立花隆
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20051129/p1 立花隆ネタ
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20051121/p2 立花隆、たぶん最後。
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20051020/p1 立花隆
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20050728/p2 [D][pseudoscience]立花隆批判の続き
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20050724/p3 [D][pseudoscience]真実の護り手
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20050719/p4 [A][pseudoscience]知性を持たない人は存在しないという命題の反証
http://d.hatena.ne.jp/nuc/20050717/p5 [B][pseudoscience]立花隆