有理的な二項演算子の解説

http://d.hatena.ne.jp/nuc/20050530/p1

前半はただの感嘆であった。後半の主張を紐解いてみよう。

とあるほうれん草の目利きがいた。その人は最上級のほうれん草を表現するのに、エスカルゴのようにまろやかだという比喩を用いた。しかし、この鑑定士はエスカルゴを食べたことがない。このような喩えは、この目利きの腕(いや鑑識眼か)すら疑わしくさせる。

さて、この比喩を捻り出したのは私であるが、残念ながら、私はエスカルゴを食べたことがないばかりか、ほうれん草の最高級品というのがいかなるものかも理解していないゆえ、ほうれん草の専門家の方にお叱りを受けるかもしれない。もしも最上級のほうれん草が実際にエスカルゴのようにまろやかであるならば(、そしてエスカルゴがまろやかなら)、私自身が良い喩えになっている。

さてさて、有理的な二項演算子というものをここでは以下のように定義しよう。演算子($)に放り込んだ時に有理数を返すような無理数のペアが存在するときに、この演算子($)は有理的であると呼ぶことにしよう(僕の決めたここだけのルール)。

有理的でない二項演算子が存在することは自明であるが、(+), (-), (*), (/), log_a b, a^b はそれぞれ有理的であるだろうか。

おそらく、後ろから行ったほうが分かりやすいだろう。
有理数というのは、整数(p,q)の組を用いて p/q とかける数。無理数は実数で有理数ない数である。

> 有理的でない二項演算子が存在することは自明
例を挙げよう。 f(x,y) := \sqrt 2を考えよう。どんな無理数のペアをいれても無理数が返ってくる。

ふう。

(+), (-), (*), (/), log_a b

それぞれ、(√2, -√2), (√2, √2), (√2, √2), (√2, √2), (√2, √2) が条件を満たす。
では、最後のだ。
a^b というのは、例えば 3^4 というのは 3*3*3*3 を指す。じゃあ、3の√2乗ってなんだよ、といわれそうだが、それは収束で定義すればよいでしょう。

この問題には有名な解法がある。

 \Large a=\sqrt 2
 \Large b=\sqrt 2
としよう。そうすると
a^bが有理数かもしれないし、無理数かもしれない。
a^bが有理数ならば、有理数が返ってくるからあることが示された。
a^bが無理数ならば、改めて、 \Large a = \sqrt 2 ^{\sqrt 2}, \quad b = \sqrt 2 としよう。
すると、 \Large a^b = ({\sqrt 2}^{\sqrt 2})^{\sqrt 2} = {\sqrt 2}^{(\sqrt 2 \times \sqrt 2)} = {\sqrt 2} ^2 = 2
で2は有理数だから、有理数が返ってくるからあることが示されたとなる。

これで id:flappphys の反応が理解していただけたかと思う。

Gelfand-Schneiderの定理によれば sqrt(2)^sqrt(2) は超越数なのだそうだ.

超越数というのは、有理数係数の代数方程式の解にならない数のこと。
たとえば〜、√2は超越数ではない。なんでかっていうと、x^2-2=0の解になっているから。
でも、円周率などはどのような有理数係数の方程式にならないことが示されている。そして、sqrt(2)^sqrt(2)もまたそうであるので、場合わけの必要などないじゃないか、というコメントである。

ところで、真ん中は何を言っていたかというと

ほうれん草の目利きが、「最上級のほうれん草を表現するのに、エスカルゴのようにまろやかだ」と表現したとする。
もしも最上級のほうれん草が実際にエスカルゴのようにまろやかでないならば、この話は「下手な比喩を用いることは、その人の他の能力すらも疑わしく見えさせる」例になっている。
また、最上級のほうれん草が実際にエスカルゴのようにまろやかであるならば、この話を作り出した僕がこの話は「下手な比喩を<略>見えさせる」例になっている。

構造が一緒ですね。それだけです。