超準解析

超積と超準解析という本で超凖解析の応用について面白いことを述べていた。

経済、確率……

齋藤:ロビンソンは経済現象への応用というのを共著で書いている。
倉田:トムにせよロビンソンにせよ、外国人のほら吹きは必ず経済現象と言うな。
齋藤:経済では全部のファクターが有限なのに超準解析を使うのはどういうことかなと思ったが、たとえば一人の個人の行動はマクロな経済に影響を及ぼさない、だから無限小だというらしいのだが……
倉田:完全にライプニッツの哲学の再現ではないか。モナドか、我々は……
広瀬:だから個人が無限に何かをやる可能性があるわけだな。
齋藤:実はそれはおかしい。一つが無限小なら、それが十億集まっても無限小のはずなのだが……
確率論はどうだろう。
倉田:川端君の仕事は大体函数空間上の一様測度ということだから、確率論にも関係すると言ってよい。
齋藤:もっと素朴な話で、この本にもちょっと書いたが、宝くじの抽籤会みたいにまわっている輪に矢を射るとき、必ず輪に当るとしても、指定された一点に当る確率はゼロだ。これは少しおかしいところがある。ところが超準測度ではかると、0ではない無限小の値がちゃんと出て、しかも全部合わせると1になる。
広瀬:あれは非常に納得しやすい。
齋藤:だから超準測度はかなりいい線を行っていると思う。数学の理論としてうまく行くかどうか分からないが、直観性を回復したことでとりあえず評価したい。
一般に、少しヘンな感じがすることはみんなそこで何かやる余地があるのではないか。むかし円とその接線とのなす角のことを一生懸命考えた人がいる。そういうものが無限小解析につながった。この種のことはほかにもいろいろあると思う。

ファクターが有限というのは超準解析と経済の関係に限らないはずで、解析が物理に使えるのも本質的に同じような問題を孕んでいるのではないか。たとえば有限和を積分に置き換えるなどだ。
ただ、物理だと相当な精度であっていて、また、精度の範囲内でしか問題にしないからあんまり表沙汰にはならないのか。