あやとり

かばんに放り込んだイヤホンをひっぱりだしてくる。
そのぐちゃぐちゃに絡まったコードをみて、ふと思いだす。
幼馴染の N ちゃんとはよくあやとりをして遊んでいた。


大人になってみれば、あやとりなど何が楽しいのか分からないけれども、
子供にとってはくるくると予想外に形が変わる様子を見ているだけでもとても楽しいものだ。
それに子供の指は短いからたまにとりそこなう。


いつだったかそんな風にして糸が絡まったときのことだ。
「どう絡まっているかみてほどかないと結ばっちゃうよ」
と僕がいうと N ちゃんは
「大丈夫、締まりそうなところを軽く引っ張っていけばほどけるから」
といって、そのとおりに解いてみせた。


あのときからだいぶ大きくなった手のひらを少し眺め、
そして、手元のコードを柔らかく引っ張りはじめた。