遠野物語

今年2月に原平被告が自宅で母親と長男長女2人の孫を殺した事件があったが、遠野物語*1に似たような話があった。
まとめるとこうなる。

11.もともと母一人子一人の家で、嫁姑の仲が悪かった。嫁が実家に帰ってしまうこともよくあった。あるひ嫁が寝ていると「昼の頃になり突然と倅(せがれ)の言うには「ガガ(母)はとても生かしては置かれぬ。今日はきっと殺すべし」とて、大なる草刈鎌を取り出し、ごしごしと研ぎ始めたり。その有様さらに戯言(たわむれごと)とも見えざれば、母は様々に事を分けて詫びたれども少しも聴かず。嫁も起出でて泣きながら諌めたれど、露従う色もなく、」母が逃げようとするので戸口をすべて鎖した。トイレに行きたいというと自ら便器を自ら持ってきて、ここへしろという。「夕方にもなりしかば母も終(つい)にはあきらめて、大なる囲炉裡の側(かたわら)にうずくまり只泣きて居たり。倅はよくよく研ぎたる大鎌を手にして近より来り、先ず左の肩口を目掛けて薙ぐようにすれば、鎌の刃先炉の上の火棚に引掛かりてよく切れず。」このとき、母の兄(菊池弥之助)は奥山で茸を取るために小屋で泊まっていたのだが、深夜に遠くできゃーという女の叫び声が聞こえて驚いたという。これがちょうどこの時間だった。
二度目には右肩より切り下げたが、これでも死に絶えなかった。そこに里人が驚いて駆けつけて倅を取り押さえ、警察に引き渡した。「母親は男が捕らえられて引き立てられて行くを見て、滝のように血が流るる中より、おのれは恨も抱かずに死ぬるなれば、孫四郎は宥したまわれと言う。」これを聞いて皆心を動かした。孫四郎は途中で鎌を振り上げて巡査を追い回したが、狂人として孫四郎は放免されて家に帰って、今も生きている。

*1:ちなみに遠野物語は実話集です