絶交
統計力学の序論。
まず、小正準集団というものを考えたい。体積Vの空間にN個の粒子が散らばっていて全エネルギーがEだとしよう。このときの粒子が「ある状態にある確率」というものを考えればきっとこの子のことがよく分かるに違いないよ。
確率を考える時は必ず確率空間っていうのを定義しなければならない。たとえるならば、1の出やすいサイコロなのか均等に出るサイコロなのかを知らなきゃ、どのような確率で1がでる事象が起きるかは分からない。(高校範囲の確率はそのへんがいい加減でサイコロは断りがなければ均一な確率空間だし、独立っぽかったら独立とかひどいもんさ。)
本当は、ある系を持ってきてそれをしばらく時間発展させて、その微小時間当たりに実現された状況っていうのが同じ測度(面積のお化け)を持つようにしたいんだけど、それだと計算できない(のかな)らしいので、ここで近似として「相空間上でのR^6Nからでてくる測度がさっき出てきた奴と一致する」とする。これがエルゴード仮説(だよね)。相空間だとか測度だとか訳分からん言葉が出てきたけれども、結局、どういうことになったかというと、ある粒子Aの位置のx方向がにあってy方向がにあって…、あと、Aの速度のx方向が…にある確率と、もう一つの粒子Bのそれを比較すると、
そこそこ自然じゃないですか。あとは、粒子ごとに独立で。ちなみに、相空間っていうのは、以下のようなもの。N個の粒子があったら、N個の粒子の位置と速度を全部調べたら 6N個の数字が出てくる。それは 6N 次元のグラフに表示することができる。そうすると、この 6N 次元のグラフの点を決めれば、粒子の置き方が決まるから N個の粒子の状態をグラフと対応つけることができるよね。このグラフが相空間。
それはさておき、これで確率空間が定まったから、「ある状態にある確率」っていうのが計算できる〜。つまり、相空間があらゆる状況を示していて、その状況にある確率が求まっているから、状況から決まる状態の確率は計算できるさ。で、勿論、部屋の中の空気の粒が全部僕の手の上に集まっている可能性もあることにはあるんだけど少ないから、とりあえず、一番起き易いことだけを考えることにしよう。この仮定が尤もであることは最後まで読めば分かると思う。
ところで、初めの行を見ると、エネルギーEと全粒子数N。っていうのは決まっているという仮定だった。だから束縛条件付の最大値っていうのを求めなきゃいけない。これはラグランジュの未定乗数法っていう便利なものが出てきて、さくっと計算できる。うれしい。
一休み。
これを用いると粒子のの散らばり方というのが評価できる。ここで、一粒子の相空間を考えよう。つまり、6次元の空間にN個の点をちりばめることになる。
一粒子の相空間をn個の同じ大きさのマスに分けよう。それぞれのマス i にある粒子の数を として を i に粒子が一個あるときのエネルギーとしよう。そうすると、、 が束縛条件で、 これが n個のマスに (n_1個, n_2個 …) と割り振る方法が何通りあるかを示している。このWを最大とするような 割り振り方 (n_1個, n_2個 …) こそが最も多く実現している可能性の高い状態であろう。
スターリングの公式を使うと
となって、これに、を束縛条件として未定乗数法を使う。
の微分を考えると、
これが任意のに対して成立していることから
が分かる。
と便利のためにおくと、束縛条件に代入して
ちょっと省略すると、これを熱力学と比較して、整合性がとれるようにすると
とか、エントロピーが
であるとか
自由エネルギーが
であることなどが分かる。
満足。
でもでも、実際は全エネルギーがEだって分かることなんかないんだ。だって、この部屋にいる粒子すべての速度を測ることなんてできない。分かることは温度計を置くとどの目盛りを指すか、つまり、どのような温度計と熱平衡状態に至るか、ってことだ。だから、小正準集団をたくさん持ってきて、それらの間で自由に熱がやりとりされる状態を考えよう。そうすれば、本来のエネルギーの期待値や分散が分かるだろう。M個の小正準集団を考えてみよう。
このM個は、小正準集団の状態をすべて集めてきた空間 Γ_0 の上に適当に分布している。さっきと同じ感じで。
さっきと同じだとすればすることは決まっていて、小正準集団の状態をすべて集めてきた6N次元の相空間を細かく分けて番号を振る。その番号に対応するエネルギーを、その状態を取っている小正準集団の個数をとすると、
そうすると、さっきとほとんど同じ議論になって、
、 (ただし、 E_M は Γ0 の上のエネルギー全部。)の束縛条件の下で、M_j の分布を考える。
略
結局、
となる。(と置いた。)
あ、このZって分配関数とか云って、えらいの。
さらに。<E>を平均としよう。そうすると、<E>はMの中の平均であるから
になりますね。
ところで、上の式の分子って、
ではないですか!
ということは
ですね。
ついでに、分散も求めてみましょう。(語尾が変わってた。戻す。)
これはやってみたらなる。
右辺は理想気体だと
だね。
(は定積モル比熱。)
だからさらに変形できて
これがエネルギーの分散。
理想気体だと内部エネルギーは温度だけで決まり、PV=nRTとかいういかした性質を持ちますね。で、Zがきちんと積分計算で求められて、
Bはややこしい定数。
と分かる。
そうすると、そうすると、
となる。
ついでに、
(ようするに R と k_B はモル換算か個数換算かの違い。)
となった。あ〜、なんか見慣れてる式だよね。
これからが本題。
として、
を使うと
となる。
標準偏差は分散の平方根だから
となる。
つまり、こいつらの中に、300.001Kのやつが紛れ込んでいたとしよう。わずか、1mKの差だと思っても、こやつの偏差値は、31680000「三千百六十八万」だ。
逆にいうと、自分の偏差値が300であるからといって得意になってはいけない。お前はたかが 300.000000007890K である。