高等教育を侵食する似非科学

いんすぱいああど ばい http://blackshadow.seesaa.net/article/4662570.html (初等教育を侵食する似非科学)

そういえば、私が教養学部時代に受けた東大の英語一の授業は正直ひどかった。
英語の教科書は The Expanding Universe of English〈2〉isbn:4130821040(一年生は The Universe of English〈2〉isbn:4130821032 ほかにビデオ教材もあった) であった。ある章には「科学的に誤りがあるために使いません」というアナウンスが入った。

私は前(たとえば、http://d.hatena.ne.jp/nuc/20050727/p3 に)も述べたように間違うこと自体はなんら悪いことだとは思っていないし、これによって著者(この場合は hiraxさん)の評価を下げたり、以降信用しなくなったりということはない。そんなことをしていたら、自分を含めた大抵の人をそう扱っていることになるし、それは豊かな議論を奪い自分にとってもよくないからだ。

だが、どうも「間違いであるか判断する能力がない」||「判断する気がない」||「理由が願望な」のに主張しているときは許しがたい。



話を戻そう。教科書のおかしいところの一部は http://d.hatena.ne.jp/nuc/20040428/1113059316 に書いた。

英語1の相対性理論の説明がひどい。ありゃとんでも科学以下だ。もっと正確にいうと、未満だ。それだけじゃなくて、リゲルといいつつ拡大されているのは、短剣の先の、たしかエジプトで視力検査に使われた星ではないか。あんなのでよいのか?

これは最近聞いたのだが、ある回では「サヴァン症の兄弟」を扱っていた。彼らは数字を見せるとどうやら素数のときに喜ぶようで、また彼らは素数を言い合って遊ぶ。ところが、彼らが喜んだ素数の例としてビデオに出ていた数字は 4294967297 であったという。ビデオを見ていた某氏は思わず「これ素数じゃない」と突っ込んだそうだ。
\Huge F_5 = 4294967297*1
まあ、素数大好きな数学者でも確かにフェルマー数なんて見せられた日には喜ぶよな。


しかし、よく考えたら、こんなのは枝葉末節で一番でかいのは「露骨に intelligent design を取り上げてあった」回じゃないか。
"Natural Selection": From Beyond Supernature by Lyall Watson(London:Hodder and Stoughton).

ただ、彼の ID は進化・自然淘汰は肯定しているようだ。しかし、非知的変異・中立的変異は否定している。
最後から二段落目は以下のようになっている。

I suggest that natural selection is subject to such guidance, that it is not altogether neutral or unintelligent, but can respond to a still small voice that, in effect, says, "No, that doesn't feel right. Try again in another way." And goes on nagging just often enough and long enough to make a powerful difference. Biologists talk a lot about survival of the "fiteest", using the word more often than not to dscribe an organism which is big enough, strong enough, smart enough. But it seems to me to be more appropriate to take the word to mean befitted to and not armed against.

ようするに、ここまでの段落も含めて要約すると

自然淘汰は起こるんだけれども、それはなんか大自然の意思っぽいものが介入しないと説明できないと思う。しかし、たとえば、ルービックキューブを盲人がいじって勝手にそろう確率は大体 50,000,000,000,000,000,000回に1回だ。だが、うまい人は平均23秒でそろえられる。つまり、うまい人が「そっち違う」とか「できた」とか述べれば盲人でもルービックキューブは揃えられる。
つまり、大自然の意思が、知的でよい方向に世の中を持っていこうとしているがために進化は起きるのだ。
そして、テレパシー能力があって生物の進化によくないことをしようとすると、ダメだよとささやいてくる。テレパシーの能力の一例は、日本で見た「生後一日のひよこの性別を見分ける」だ。何が異なるかはっきりとは分からないが直感的に行なわれるのは、このささやきによるのだ。


提出する紙の授業の感想を書く欄に

I'm sure he doesn't know statistical physics!!

とかいたら

I agree!!!

って一行だけ書かれた返事が返ってきたよ。
東京大学の英語教師にもまともなのがいるかもしれない。



ちなみに、Lyall Watson さんは
http://blackshadow.seesaa.net/article/4694463.html 幻影随想 100匹目のサルの嘘(黒影さん)
(リンク先追加 3/23)
http://www.geocities.jp/wakashimu/yota/saru.html 百匹めのサル(wakashimuさん)
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1126074971 百匹目の猿と戯れる(菊池先生)

にも取り上げられているように、かの有名な「101匹サルちゃん*2」を捏造した(と本人が認めている)方です。
だったら、はじめっから大自然おしおき教えてもらえばよかったのにね。

*1:フェルマー\Large 2^{2^5}+1をあらわす

*2:100匹のサルがいもを洗うと、テレパシーによって遠隔地のサルがいもを洗うという現象