好きな素数

目が覚めると、時計は午前10時を指しているのに真っ暗だった。蛍光灯の明かりをつけるといつもの部屋だ。ただ、窓の外がおかしい。本当に真っ暗なんだ。慌てて部屋の外に飛び出すとそこは広いホールだった。中央の柱にもたれかかって二人が話し合っている。ボクの姿に気がついて片方が声をかけてきた。「いらっしゃい。とりあえずこっちこいよ。」ボクは駆け寄った。「とっても残念なお知らせだけれども、どうやら、ここからでるにはこのゲームをしなきゃいけないようなんだ。」彼は吐き捨てるように言って、柱を指差した。そこにはルールが彫られていた。

このホールのルール

0. 相談が終わったら全員が自分の部屋に戻る。
1. 中央付近の床からレバーが二本生えてくる。このレバーは右か左かに倒れた二つの状態をとることができる。はじめにどう生えてくるかは分からない。
2. 誰かの部屋のドアが開く。その部屋の主は中央のレバーのどちらかを選んで、右にあったら左に、左にあったら右に動かす。それが終わったら自分の部屋に戻る。すると、次に誰かの部屋のドアが開き、その人も同じことをする。そして、これが繰り返される。

全員がレバーに触ったことを確信した人は「全員!!」と叫ぶ。そのときに、全員がレバーに触ったことがあれば、ここから出られる。
(ただし、一人が一度しか呼ばれないわけではない。いつでもその何回後かには呼ばれることが保証されている。)

ドアの数を数えると23。ボクが好きな素数だ。「もう少ししたらみんな来るだろうよ。そしたら誰か頭のいいやつが考えてくれるさ。」「ううん、もう解けたの。」ボクはそういってにっこりと微笑んだ。「おいおい、冗談だろう、お嬢ちゃん。」

〜中略〜

誰かの叫ぶ声が聞こえた。「全員!!」

目が覚めた。窓の外を見ると、街灯が煌々と静寂な夜を照らしている。午前四時。時計はそういっている。安心してまた眠りについた。